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胃癌
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慈恵医大外科での治療の特色


A.早期胃癌に対する迷走神経温存手術と腹腔鏡下手術

胃癌治療のガイドラインにも書かれていますが、早期胃癌の場合、残せる機能はなるべく残して術後の障害を減らそうとする機能温存手術ができるようになってきました。
 具体的には、これまでの一般的な胃がんの手術では、自律神経のひとつである迷走神経を切っていましたが、これを残すことで下痢や体重減少、術後の胆石症などの予防が期待されています。いまや胃がんの専門医は誰でもできるようになってきましたが、慈恵医大では、日本でさきがけて1990年ごろからこの方法を行っています。医師用のガイドラインにもわたしたちのこれまでの迷走神経温存術の成績が参考にされています(10ページ:参考文献13)。

また、早期胃癌に対しては、従来の大きくお腹を開ける手術ではなく、5〜10mmの小さい穴をお腹に開け、そこからカメラと手術器具を挿入して手術する腹腔鏡下手術も施行しています。この手術には内視鏡外科学会の技術認定資格を取得している医師がチームで担当し、体にやさしい低侵襲な腹腔鏡下手術を提供しています。


B.センチネルノードナビゲーションシステムによる手術

最近、乳がんで臨床応用されているセンチネルノードコンセプトが胃がんでも行われるようになってきました。センチネルノードコンセプトとは、がん細胞が直接流れていくリンパ管やそれに続くリンパ節(センチネルノード;見張りリンパ節といいます)を見つけて、それを取り出して、そこにがん細胞がいなければほかのリンパ節にはがんが飛び火、つまり転移していないという考え方のことです。ですから、そこに転移がなければおおきくリンパ節をとってこなくてもいいということになりますが、今までこの区別がつかなかったため、がんの手術では大きめに取ってこざるを得なかったのです。

現在わが国では乳がんだけではなく、胃がんでもがんのところに目で見えるように色素を注射したり、放射性物質を注射して調べたりする方法が臨床研究として行われています。慈恵医大では、色素を注射してもなかなか目で見えづらかったり、放射性物質を注射しても調べづらかったりすることから、独自の方法で臨床研究を行っています。これは、色素のうちインドシアニングリーンという緑色の薬が赤外線でとてもよく見える(ちなみにほかの色素は赤外線でみえません)という性質を利用して、赤外線の装置のついた特殊な内視鏡で観察すると、とてもよくセンチネルノードをふくめた色素に染まったリンパ節を同定する方法です。平成19年4月の段階で、腹腔鏡手術83人の方を含めて200人の方にこの方法を行った結果、34人の方にリンパ節転移を認めましたが、すべての方がこの方法で転移していたリンパ節を見つけることが出来ました。

近い将来、この方法が安全に臨床応用されるということが証明されれば、転移のある方は通常の手術を、ない方はそれ以上リンパ節を取ったりせず小さく胃を切るだけの手術で大丈夫というようになるでしょう。また胃全摘が必要となる方にたいしても、できるだけ術後のいろいろな障害を減らすために、胃の代わりにする小腸を袋状にしたり、大腸の一部を胃に代用したりと、個々の状況にあわせて工夫をしています。

■ 胃がんのセンチネルノードナビゲーション手術

はじめに手術中に内視鏡をして、がんの周りにインドシアニングリーンという緑の試薬を注射します。

赤外線の観察ができる特殊な内視鏡システムです。

胃癌のセンチネルノードナビゲーション手術(通常光と赤外光での見え方の違い)

ふつうの内視鏡では左のように何も見えませんが赤外線に切り替えると
リンパ節(実線矢印)や、そこにいくリンパ管(点線矢印)が黒くくっきり見えます。

通常の腹腔鏡観察では緑の色素は見えないことが多いのですが、赤外線に切り替えるとこんなによく見えます。このリンパ節のある領域をまとめてとってきて、外に取り出してからそのリンパ節をさがします。病理の先生に、手術中に顕微鏡で癌がここにいないかをよくみてもらいます。

センチネルノードコンセプトの実例

左は取り出したリンパ節を通常の腹腔鏡で見ているところです。うっすらと緑にみえますが見えづらいです。右は赤外線に切り替えたところですが、色素が入っているリンパ節は黒くよく見えます。
この、リンパ節に転移がなければほかのリンパ節にも転移がないだろうという考え方が、センチネルノードコンセプトです。


C.ガイドラインに沿った定型手術

胃癌の手術の目的はがん病巣の切除、リンパ節郭清、切除後の再建の3つです。がん病巣を完全に切除することが手術の最大の目的です。部分的な胃切除(胃切除術)と胃全部の切除(胃全摘術)が一般的です。切除する範囲は癌が胃のどこにできたか、広がり、その進行度によって決められます。胃の下側(幽門側)にできたものは幽門側胃切除が行われます。幽門側胃切除では幽門を含めて胃の下側1/2から2/3を切除します。胃の中心部にできたものや、広い病変または二つ以上の病変があるときには胃全摘術が行われます。胃全摘術では噴門、幽門を含めて胃を全部切除します。胃の上側(噴門側)に限局した小さい胃がんでは噴門側胃切除が行われれることもあります。噴門側胃切除では噴門を含め胃の上部1/2から1/3を切除します。

これら以外にも、QOL(生活の質)の向上を目的とした縮小手術もあります。縮小手術には、幽門保存胃切除があり、病変の状態により適応を決めています。

がんの完全切除のためには胃だけを切除するのではなく、胃周囲のリンパ節の切除(リンパ節郭清)も同時に行います。大きなリンパ節転移は手術中に見て判断できますが、小さなリンパ節転移は肉眼では分りません。そこで手術時には胃周囲のリンパ節をそれぞれのがんの転移しやすい所を中心に郭清します。リンパ節転移が始まっていたとしてもがんの原発巣と共に根こそぎ切除するためです。


D.がん専門外来での抗がん剤治療

慈恵医大ではがん専門外来である臨床腫瘍部が独立して、より専門的に治療を進めていきます。外科療法で切除しきれない場合や、再発した場合が対象になります。無理なくより長いきできるように抗がん剤のみならず栄養状態の維持のための経腸栄養や痛み止めなどの緩和医療も含めて個々の方にあった治療を行っています。

治療を受けた方の約半数においてがんの病巣をを50%近く縮小する効果をみせる薬剤は出てきましたが、完全に消失することは依然極めてまれです。したがって、薬だけの治療の目標は延命、QOL(生活の質)の向上あるいは腫瘍を切除しきるために手術に先立って腫瘍を縮小させるということになります。有望な薬剤の組み合わせとしては、ティエスワン+シスプラチン、タキソール、タキソテール、メソトレキセート+フルオロウラシル、シスプラチン+イリノテカンなどがあります。

特にがん性腹膜炎やがん性腹水を認めたがん性腹膜炎の治療に、外科と臨床腫瘍部で総合的に治療に当たり、緩和医療も含めて個々の方にあった治療を行っています。






クリニカルパスの実例

実際に患者さんにお渡ししているクリニカルパス用語説明の実例として、幽門側胃切除術のクリニカルパスをこちらからご覧戴けます。

幽門側胃切除のクリニカルパス
*別ウィンドウに開きます。
*印刷物から起こした物ですので、実際のものと様式は異なります。



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